酒造りの現場では、タンクのバルブ、ポンプの接続、炭酸ガスの配管など、至る所に「ねじ」が存在します。
醸造現場において、バルブ交換やホースジョイントの取り付けは日常茶飯事。
しかし、いざ部品を注文しようとすると「Rp」「Rc」「G」といった謎の記号が出てきて混乱したことはありませんか?
「どれも同じに見えるし、とりあえずハマるから大丈夫」…その油断が、漏水トラブルを招くかもしれません。
今回は、醸造家が知っておくべき「ねじ規格の正体」と「互換性」をスッキリ整理して解説します。
シールの方法で分ける
管用(くだよう)ねじには、大きく分けて「シール(密閉)をどこでするか」という2つのグループがあります。
テーパねじ(記号:R, Rc, Rp)
ねじ自体が少しずつ細くなっていくことで、ねじ同士をギュッと噛み合わせて「ねじ部で」液体を止めるタイプです。
シールテープまたはシール材をねじ部に使用します。
平行ねじ(記号:G)
ねじの太さが最初から最後まで一定です。ねじ部では密閉せず、奥にあるパッキンやOリングで「面で」液体を止めるタイプです。国際標準機構(ISO)で規定されているものを日本のJIS規格も同じGとして採用しています。
ねじの組み合わせ
ねじはそれぞれ以下の組み合わせで使用します。
RねじはRc同士、GねじはGねじ同士で使用すれば問題ありません。
しかし慣習的に、GめねじにRおねじをねじ込む場合があります。シールテープを厚めに巻けばシールはできる場合が多いのですが、おすすめできません。理由は後述します。
可能な限りRcとGのアダプタを使用するようにしましょう。

海外のねじ規格
アメリカ製やヨーロッパ製の設備を導入すると、日本のJIS規格ではないねじが現れます。
海外の設備を導入することのデメリットの一つは、ねじ規格の違いと言ってもよいでしょう。
アメリカ管用テーパねじ NPT
アメリカ製の設備に必ずと言っていいほど使われているテーパねじです。
JISのRねじと見た目はそっくりですが、互換性はありません。シールどころか、ねじ山の角度が違うため噛み合いません。
NPTはNPT同士で使用する、またはRxNPTのアダプタを使いましょう。
なかなかステンレス製のNPTアダプタが無いのが辛いところですが・・・。
イギリス、欧州規格 BSP
欧州製の設備によく見られます。日本のJIS規格の元になった規格なので、JISと互換性があります。
海外で広く販売されているねじ部品はBSPを採用していることも多いです。
醸造家のための部品選び
RねじとGねじの組み合わせについて、更に詳しく
ややこしい話なので雑学程度に読んでいただきたいのですが、Rねじは"耐密結合"、Gねじは"機械的結合"を目的に規定されています。
ここで、Gねじは機械的に結合するためのねじ規格ですが、本業が液のシールであることには変わりません。そのシールはGねじと同時に使用するパッキンが担っています。ねじ部の規格としては、Gねじはあくまでボルトやナットと同じ"機械的結合"です。そのためねじ部で耐密するRねじとGねじは、ねじのコンセプトとしても本来一致しない組み合わせなのです。
ただ、困ったことに海外のポンプ等だと、Gねじが切られているのにパッキンを入れる座が無いことがあります。
おそらく、同じ平行ねじであっても厳格な精度が求められるRpねじよりも、Gねじのほうが加工費が安いのでしょう。パッキン座のない平行ねじに出会ったら、Rpとして扱い、Rねじにシールテープを多く巻いてねじ込むしかありません。
おわりに
醸造の世界では、原材料や発酵温度には並々ならぬこだわりを持つ一方で、配管や継手といったハードウェアの話は、どうしても後回しになりがちです。しかし、今回見てきたように、「Rp」と「G」の違いや「JIS(R)」と「アメリカ規格(NPT)」の違いを知ることは、突発的な漏水トラブルを防ぐことや、製品のクオリティを守ることに直結しています。もし、手元の部品をねじ込む時に「あれ、少し固いな?」と感じたら、無理にレンチを回す前に、一度そのねじの記号を確かめてみてください。
★ この記事の作成者
新谷
私はクラフトビール醸造所で生じるトラブルに真摯に向き合い、現場目線の解決策をお客様に提供しています。 サニタリー継手の販売、充填技術支援、ステンレス品の加工など幅広く対応いたします。
これから醸造所を開業される際のご相談はもちろん、既存の設備でお困りの事がございましたら、お気軽にRHSにお問い合わせください。 機械設計と国内外のクラフトビールシーンを経験してきたスタッフが現場目線で解決いたします!
